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東京高等裁判所 昭和55年(行コ)78号 判決 1982年2月18日

埼玉県大宮市土手町三丁目一八四番地

控訴人(付帯被控訴人)

大宮税務署長

内田稔

右指定代理人

布村重成

村上憲雄

荒谷英男

北沢福一

埼玉県大宮市高鼻町三丁目六八番地

被控訴人(付帯控訴人)

山形屋興業株式会社

右代表者代表取締役

佐藤長八

右訴訟代理人弁護士

中村喜三郎

右当事者間の法人税額等更正処分取消等請求控訴並びに付帯控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

一  原判決中控訴人(付帯被控訴人)敗訴の部分を取り消す。

被控訴人(付帯控訴人)の請求を棄却する。

二  本件付帯控訴を棄却する。

三  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人(付帯控訴人)の負担とする。

事実

控訴人(付帯被控訴人、以下「控訴人」という。)指定代理人は、主文と同旨の判決を求め、被控訴人(付帯控訴人、以下「被控訴人」という。)訴訟代理人は、控訴棄却の判決を求め、付帯控訴として、「原判決を次のとおり変更する。控訴人が被控訴人に対し昭和五〇年六月三〇日付でした被控訴人の昭和四七年八月一日から昭和四八年七月二〇日までの事業年度分の法人税の更正及び重加算税賦課決定はこれを取り消す。被控訴人が控訴人に対し昭和五〇年六月三〇日付でした昭和四七年一二月分給与に係る源泉所得税五五六万三五八四円の納税告知及び不納付加算税五五万六三〇〇円の賦課決定はこれを取り消す。訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張及び証拠関係は、控訴人指定代理人において、乙第一九ないし第二四号証を提出し、当審証人北沢福一の証言を援用し、被控訴人訴訟代理人において、当審証人細野春雄の証言及び被控訴会社代表者本人尋問の結果を援用し、右乙号各証の成立は不知と述べたほか、原判決事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

理由

一  次の事実は当事者間に争いがない。

1  被控訴人は、不動産売買業を営む青色申告者であるところ、昭和四七年七月一八日、株式会社丸武倉庫から千葉県市川市南行徳第二土地区画整理組合保留地街区番号一三四仮番地二の土地三二〇〇・四七平方メートル(九六八・一四坪、以下「本件土地」という。)を一億一一三二万円で購入し、同年一二月二七日、浅上航運倉庫株式会社(以下「浅上航運」という。)に対しこれを坪当り一七万円に相当する一億六四五六万円で売却した。

2  そして、被控訴人は、昭和四七年八月一日から昭和四八年七月二〇日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)分の所得金額の計算上、有限会社光栄建設(以下「光栄建設」という。)に対し本件土地の整理工事代金九八〇万円を支払ったとしてこれを損金に算入したうえ、同年九月二〇日青色申告書により本件事業年度分法人税の確定申告を行い、翌昭和四九年七月三〇日青色申告書により所得金額を七三八一万四〇二四円、法人税額を二八二五万二七〇〇円と修正する修正申告を行った。

3  しかし、控訴人は、右九八〇万円の損金算入を否認し、昭和五〇年六月三〇日付で、所得金額を八三六一万四〇二四円、法人税額を三一〇八万八七〇〇円とする更正を行うとともに、重加算税八五万〇八〇〇円の賦課決定を行い、更正通知書に「経費中損金不算入額九八〇万円。昭和四七年一二月二八日千葉県市川市行徳地区の宅地造成費用として東京都板橋区成増四-二五有限会社光栄建設に支払った九八〇万円は次の理由により損金となりません。(1)造成現場を実地に確認した結果造成の事実がないこと、(2)上記有限会社光栄建設において代表者ほか関係者に対し造成の真否を確認した結果、造成工事を請負ったことがないこと」との理由を付記した。

4  また、控訴人は、被控訴会社代表取締役佐藤長八が昭和四七年一二月二八日被控訴人の振出した金額九八〇万円の小切手金を取得しているとして、右九八〇万円は同人に対する賞与である旨認定し、昭和五〇年六月三〇日付で被控訴人に対し、昭和四七年一二月分給与に係る源泉所得税五五六万三五八四円の納税告知及び不納付加算税五五万六三〇〇円の賦課決定を行った。

5  被控訴人は、原審の相被告国税不服審判所長に対し、右法人税の更正決定及び重加算税賦課決定について昭和五〇年八月二一日、右源泉所得税の納税告知及び不納付加算税賦課決定について同年九月一七日、それぞれ審査請求を行ったが、右審判所長は、昭和五二年三月一六日付で右審査請求をいずれも棄却する旨の裁決を行った。

二  被控訴人は、本件事業年度に属する昭和四七年一二月二八日光栄建設ないしその社員に対し、本件土地の整地代(造成工事費)及び売却の仲介料として九八〇万円を支払ったから、所得金額の算定上右九八〇万円は損金に算入されるべきである旨主張するので、以下判断する。

1  被控訴人の右主張に副う証拠としては、甲第三号証の一ないし三(工事請負契約書、請求書、領収証)、第五号証(仕入補助簿)、乙第一号証(小切手写)、第四号証の一ないし四(工事請負契約書、請求書、内訳書、領収証の各写、乙第四号証の一、二は右甲第三号証の一、二の、乙第四号証の四は右甲第三号証の三の写である。)原審証人赤神敬太、同小池りつ子、原審及び当審証人細野春雄の各証言並びに原審及び当審における被控訴会社代表者本人尋問の結果であり、右各証拠の内容の概略は次のとおりである。

(一)  甲第三号証の一、乙第四号証の一は、被控訴人と光栄建設との間の昭和四七年一一月三日付工事請負契約書であり、これには光栄建設が被控訴人から本件土地の埋立工事を代金九八〇万円、同年一一月五日着工、同年一二月二五日完成の約で請負う旨記載され、その末尾に光栄建設の記名印、社印及び富永光江(光栄建設の代表取締役)の丸印が押捺されている。

(二)  甲第三号証の二、乙第四号証の二は、光栄建設から被控訴人に宛てた同年一二月二五日付請求書であり、これには本件土地の埋立工事費として九八〇万円を請求する旨記載され、光栄建設の記名印が押捺されている。

(三)  乙第四号証の三は、右請求書の内訳書写であり、これには、

水盛遺方及びトンボ打三二三四平方メートル 六四万六八〇〇円

埋設障害物除去一式 三〇万円

表土処分一式 一三万円

埋戻盛土四八五〇平方メートル 五八二万円

地均し工事三二三四平方メートル 九七万〇二〇〇円

仮囲い一式 五万五〇〇〇円

片付清掃一式 四〇万円

現場経費一式 一四七万八〇〇〇円

合計 九八〇万円(切上計算)

と記載されているが、光栄建設ないし富永光江の印は押捺されていない。

(四)  甲第三号証の三、乙第四号証の四は、光栄建設から被控訴人に宛てた九八〇万円の昭和四七年一二月二八日付領収証であり、これには光栄建設の記名印と社印が押捺されている。

(五)  乙第一号証は、被控訴人が右同日振出した九八〇万円の小切手写であり、その裏面には光栄建設の記名印が押捺されるとともに、被控訴人の社員が押捺され、手書で「山形屋興業株式会社代表取締役佐藤長八」と記載されている。

(六)  甲第五号証は、仕入補助簿の一葉であり、本件土地につき昭和四七年一二月二八日欄には「土地整地代及び仲介料」なる記載があるが、そのうち「及び仲介料」の字のインクの色は「土地整地代」の字のインクの色とやや異なり、「及び仲介料」は後から記入したものであることが窺われる。

(七)  証人赤神敬太の供述(税務調査の際係官に述べた乙第一二号証、第一六号証の記載も含む。)の要旨は、次のとおりである。

赤神敬太は、昭和四七年当時宅地建物取引業を営む株式会社ゼネラル大勝(以下「大勝」という。)の代表取締役をしていたところ、業者仲間の出入りする東京プリンスホテルのロビーで「栄」という字のつく社名の会社の社員や「インペリアル」というような外国語のつく社名の会社の社員から、被控訴人が本件土地を坪当り一七万円以上で売りに出しているとの情報を得たうえ、本件土地の図面を渡されて買主の斡旋を依頼され、その後浅上航運を被控訴人に斡旋して本件土地の売買契約を仲介成立させたが、被控訴人からは仲介料を受領せず、浅上航運からのみ三〇〇万円の仲介料を取得した。なお、右情報提供者の氏名やその者の属する会社の正確な名称は記億していない。

(八)  被控訴会社代表者の供述の要旨は次のとおりである。

本件土地売却の新聞広告を出したところ、光栄建設の社員と大勝の社員が名刺を持って斡旋に来たので、昭和四七年中に造成して坪当り一七万円以上で売却してくれるなら九八〇万円支払う旨約したものであり、光栄建設は少しは造成工事もしたと思うし、光栄建設の社員に対し九八〇万円の小切手を交付した。なお、光栄建設の社員から貰った名刺はその後処分し、現在は存在しないし、該社員の氏名は記億していない。また、昭和四七年一二月二八日ころ又は翌昭和四八年一月一〇日ころまでの間に、被控訴人の担当者小池(旧性庄司)りつ子に命じて前記仕入補助簿に「及び仲介料」と記入させた。

(九)  原審証人小池りつ子、原審及び当審証人細野春雄は、前記仕入補助簿の「及び仲介料」の記入に関し、被控訴会社代表者の供述と符合するような供述をしている。

以上の各証拠、特に書証の記載が真実に合致するならば、被控訴人の前記主張は証拠によって裏付けられるというべきである。

2  そこで、右各証拠の実質的証拠価値を検討するに、成立に争いのない甲第四、第七号証、乙第三、第五、第六号証、原本の存在及び成立に争いのない乙第一一号証、第一四号証の一ないし三、原審証人松田六郎の証言により真正に成立したと認められる乙第七ないし第一〇号証、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第一三号証、原審証人佐藤哲男、同松田六郎、同富永光江の各証言並びに弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実を認めることができる。

(一)  光栄建設は、その代表取締役富永光江の夫の経営していた富国興業株式会社(建築下請業)が工事途中で倒産したため、その仕掛工事を完成させる目的をもって、土木建築及び一般建築工事の請負並びにこれに付帯する業務を行うものとして、昭和四七年六月一九日設立された有限会社であり、翌昭和四八年三月ころには右目的を達成して事実上解散し、そのころその社員も所在が不明となった。そして、光栄建設が本件土地の造成工事や売却の仲介をしたことはなく、その代金として被控訴人から九八〇万円の小切手を受領したこともない(尤も、富永光江は、右のように述べるとともに、前記工事請負契約書、請求書、領収証、小切手の裏面に押捺されている光栄建設の記名印、社印及び富永光江の丸印は、いずれも光栄建設の使用していた印章によるものであり、自己がこれらを押捺したことはないが、光栄建設の従業員が押捺した可能性はある旨供述している。)。

(二)  被控訴人は、前記一2のとおり昭和四八年九月二〇日本件事業年度分法人税の確定申告を行ったが、次いで翌昭和四九年三月一五日修正申告を行った。ところが、その後たまたま、四谷税務署が被控訴人の取引先である増田建築株式会社(以下「増田建築」という。)に対して税務調査を行った際、右税務署の追及に対して増田建築が、昭和四七年一〇月ころ被控訴人の依頼を受けて被控訴人との間において、東京都足立区内の土地埋立工事を代金八八〇万円で請負った旨架空の工事請負契約書、請求書及び領収証(乙第一四号証の一ないし三)を作成して被控訴人に交付し、同年一一月三日ころ被控訴人から金額八八〇万円の小切手の交付を受けてこれを換金し、そのうち七九〇万円を被控訴人に返金し、一割に当る八万八〇〇〇円を謝礼金として受領したことを告白する事態が生じ、そのころ増田建築は右受領金を被控訴人に返還して該事実を告知した。そこで、被控訴人は、同年七月三〇日自主的に右八八〇万円を所得に含めて前記一2のとおり再修正申告を行った。

(三)  控訴人は、本件九八〇万円も架空経費ではないかとの疑問を抱き、国税調査官佐藤哲男と松田六郎を担当者として、被控訴会社代表取締役佐藤長八、前記富永光江、赤神敬太ら関係者から事情を聴取し、被控訴人から乙第四号証の一ないし四、第一一号証の提出を受け、本件土地の造成に関与した市川市役所区画整理課所属の金坂某の立会いのもとに本件土地を見分する等詳細な調査をした。その結果、前記内訳書(乙第四号証の三)に記載されている盛土工事等は全くなされていないこと及び増田建築と被控訴人との間の工事請負契約書(乙第一四号証の一)と光栄建設と被控訴人との間の工事請負契約書(甲第三号証の一、乙第四号証の一)とは同一様式の契約書用紙を用いて作成されている等増田建築に対する架空支払いの件と本件九八〇万円とがその手段方法において酷似していることが判明した。そこで、控訴人は、右九八〇万円も架空経費であると認めて昭和五〇年六月三〇日本件更正決定等の処分をした。

(四)  被控訴人は、控訴人の税務調査の段階においては、九八〇万円は本件土地の整地ないし埋立ないし造成のための費用である旨主張し、その裏付けとして前記乙第四号証の一ないし四及び同第一一号証を提出したが、「土地整地代及び仲介料」と記載してある甲第五号証を提示したことはなかった。被控訴人が九八〇万円には仲介料も含まれる旨主張するに至ったのは、審査請求後の昭和五一年六月一〇日になってからであり、甲第五号証もそのころようやく控訴人側に提示された。

以上の事実を認めることができる。

右認定の事実に加え、(イ)九八〇万円という金額は、宅地建物取引業法に基づく本件土地の仲介料の最高額として試算しうる四九九万六八〇〇円や大勝が現実に浅上航運から取得した仲介料三〇〇万円と比較して異常に高額であること、(ロ)当審証人北沢福一の証言により真正に成立したものと認められる乙第一九ないし二一号証の記載(本件土地売却の仲介に関し光栄建設の社員が関与したことはない旨の記載)に照らすと、被控訴人が光栄建設又はその社員に対し本件土地の造成工事費ないし仲介料として八九〇万円を支払ったことがないことが窺われるのであり、これによれば、前掲甲第三号証の一ないし三、乙第一号証の裏面、第四号証の一、二、四(前記二1(1)、(二)、(四)、(五))は(そのうちの光栄建設の記名印、社印及び富永光江の丸印が押捺されるに至った経緯を直接証明する資料は存しないが)、増田建設に関する架空計費計上の操作と同様に、光栄建設の代表取締役富永光江又は同社の社員が被控訴人の依頼を受け、被控訴人から若干の謝礼金を得て被控訴人と意を通じて、前記各印章を押捺して作成したものと推認すべきであり、右推認を防げる資料は存しない。前掲乙第四号証の三(前記二1(三))も右操作のため作成された書類の一つであると推認される。更に前掲甲第五号証(同二1(六))のうち「土地整地代及び仲介料」の記載も、前認定の事実に徴し、とうてい真実に合うものとは認め難い。このようにして、被控訴人の主張を支える前掲書証はすべてその実質的証拠価値を肯認することができない。そして、右書証を措き、被控訴人の主張に添うような前叙証人の供述部分のみで被控訴人の主張を証するに足るものと評価することは躊躇されるところである。

以上のとおり、被控訴人の主張に添う各証拠はいずれも採用し難く、本件九八〇万円をもって本件事業年度における被控訴人の損金と認めることはできず、右は架空の経費であると認めるべきである。

三  次に、被控訴人は、本件更正決定には理由付記不備の違法が存する旨主張するが、右主張が失当であることは原判決理由五(原判決二五丁表七行目から同二六丁表末行まで)に説示するとおりであるから、ここにこれを引用する。

四  次に、被控訴人は、控訴人が本件九八〇万円を被控訴会社代表取締役佐藤長八(以下「佐藤」という。)の賞与と認定したのは違法である旨主張するので検討するに、原本の存在及び表面の成立に争いがなく、裏面の「山形屋興業株式会社代表取締役佐藤長八」という手書部分は、そこに押されている被控訴人の代表者印が同人の意思に基づいて押捺されたこと原審証人小池りつ子の証言により明らかであるから全部真正に成立したものと推認すべく、光栄建設の記名印は、光栄建設の代表取締役富永光江もしくは同社の社員の意思に基づいて押捺されたこと前認定のとおりである乙第一号証(前記二1(五)の小切手写)、成立に争いのない乙第一七、一八号証、原審証人佐藤哲男、同松田六郎の各証言、被控訴会社代表者佐藤長八本人尋問の結果に、前記二に説示したとおり本件九八〇万円の支払いが架空経費計上のための仮装行為と認められる事実をも合せて考えれば、次の事実を認めることができる。

1  被控訴人の振出しに係る金額九八〇万円の小切手を昭和四七年一二月三〇日富士銀行千束町支店で現金化した者は、佐藤から依頼を受けた光栄建設の関係者ないしは佐藤自身又はその命を受けた者であるが(前記のとおり、右小切手(線引小切手)の裏面には、被控訴会社代表者の署名押印と光栄建設の記名印が存する。これをいかなる意味があるものと理解してなんびとに小切手金を支払うべきか、あるいは支払うべかざるものかは小切手法上問題の存するところであるが、現実には小切手金は支払われた。そして、その支払いを受けた者については、線引小切手の裏面に振出人の記名押印があればその所持人を振出人の使者ないし代理人とみなして、取引先以外の持参人に直接現金による支払いをするという慣行に従って処理された蓋然性もあるということを考慮に加えて、上記のように認定した。)右金員は同日ころ佐藤の手中に帰した(尤も、そのうちの一部が謝礼金として佐藤から協力者に支払われた蓋然性は大きい。)。

2  被控訴人はいわゆる個人会社であり、本件事業年度当時における被控訴人の株主及び取締役は佐藤とその妻及び長男の三人のみであり、妻は株式会社インペリアル及び山形屋商事株式会社の代表取締役を兼ね、長男は学生で、佐藤が被控訴人の経理、営業等経営の一切を一人で掌握していた。

3  本件九八〇万円が被控訴人の資産の取得や経費又は負債の支払いに充てられたり、被控訴人の預金又は現金として受け入れられた形跡は存しないのみならず、却って、昭和四八年一二月ころに至り佐藤個人が金融機関に一〇〇〇万円の定期預金を開設している。

以上の事実を認めることができ、右認定を左右する証拠はない。

右認定事実によれば、本件九八〇万円は佐藤において個人資産として取得したものと認めるのが相当であり、したがって、これを昭和四七年一二月分の佐藤の賞与と認定したのは相当というべきである。

五  以上によれば、控訴人のした本件更正決定及び重加算税賦課決定並びに源泉所得税納税告知及び不納付加算税賦課決定はいずれも適法なものというべきであり、右各処分の取消を求める被控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきである。それ故、右と一部結論を異にし、被控訴人の本訴請求の一部を認容した原判決は該認容部分に限り取消を免れず、本件控訴は理由はあるが、本件付帯控訴は理由がない。

よって、原判決中控訴人敗訴の部分を取り消し、被控訴人の本訴請求並びに本件付帯控訴を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 蕪山厳 裁判官 浅香恒久 裁判官 安國種彦)

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